11/04/2012(Sun)
樽をつかう理由

先週発売しました、Oak Aged 山伏 2010、おかげさまで大好評です。
今日は、ちょっと補足。
なぜ樽をつかうかについて。
もちろん、ワインの樽のフレーバーの影響も期待はしているのですが、実はそれは第一の目的ではありません。
そもそも、つかってる樽は、ワイナリーですでに何年、何回もつかわれた中古の樽。
詰めるときに、樽のフレーバーは、もちろん感じるのですが、新樽なんかとは比べ物にならないくらい穏やか。
ではなぜ?
それは、酵母のため。
前も書きましたが、通常のビール酵母では、完全醗酵させても、麦汁の糖分の一部はどうしても分解されずに残ります。
その割合は、通常のビールだと20-30%程度。
山伏の場合は、セゾン酵母と温度管理で、10%を切るくらいまで分解されていますので、通常版でも相当ドライな仕上がりです。
でも、それ以上を目指して取り組んでいるのが、この樽での醗酵・熟成なのです。
樽に詰めるに際して、ブレッタノマイセスという酵母を加えています。
この酵母、ワインの世界では毛嫌いされています。その香りは、時に馬小屋、汗、消毒、獣、あげくの果てはうん○にも例えられのですから、嫌われるのは当然です。
でも、そんな問題児ですが、ベルギーのランビックなどの味わいを特徴づけるものでもあり、最近ではアメリカなどを中心にビール醸造に積極的に取り入れられるようになってきています。
もちろん、うまくつかわないと、上記のような不快な香りにつながるわけですし、工場の複合汚染の危険性もはらんでいます。
ただ、よくできたビールには、通常のビール酵母だけでは生み出し得ない、ドライで複雑で、時にきれいな酸が特徴的な、すばらしいものが多数あるのです。
そんなブレタノマイセスですが、好気性、つまり緩やかな酸化の環境を好み、そうした環境で非常に長い時間をかけて活動します。
ご存知の通り、通常のビール醸造では、酸化は大敵。
密閉のタンクで、徹底的に還元的(=酸化の反対って意味ね)につくるのですが、こいつは別物。
というわけで、このブレタノマイセスが活動しやすくするための環境として、いわば家として木樽をつかうというわけです。
添加量、ブレタノマイセスの種類、元のビールのアルコール度数やホップの量などなどはもちろん、温度とそして時間。
最初の試みからまだ二年半。
時間はかかりますし、まだまだこれからではありますが、そんな試み続けてるわけです。
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